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こんにちは。徳島市の歯医者、喜多デンタルクリニックです。
当院では「ブルーラジカル」という最新歯科医療機器を導入しましたので、
本日はブルーラジカルについてお話をしていきたいと思います。
歯周病は成人の歯の喪失原因の第一位であり、進行すると歯の機能を損なうだけでなく、
全身の健康にも深刻な影響を及ぼします。
特に糖尿病や心血管疾患との関連性も指摘されており、単なる口腔内疾患にとどまらないことが明らかになっています。
この歯周病に対する治療法として、近年「ブルーラジカル」と呼ばれる革新的な技術が注目を集めています。
今回はブルーラジカル技術の仕組み、その治療効果、そして今後の展望について解説します。
□歯周病とは
歯周病は、プラーク(歯垢)内の細菌が原因で歯肉や歯槽骨に炎症を引き起こす疾患です。
初期段階の「歯肉炎」では歯肉の腫れや出血が見られる程度ですが、
進行すると「歯周炎」となって歯槽骨の破壊が始まり、最終的には歯が脱落する可能性があります。
□従来の歯周病治療における課題
従来の歯周病治療にはいくつかの課題が存在します。
・完全な殺菌が難しい
歯周病治療において最も難しい課題の一つが、歯周ポケット内の細菌を完全に除去することです。
歯周病の原因となるプラーク内の細菌はポケットの深部にまで侵入していることが多く、
通常のスケーリングやルートプレーニングといった手法では十分に除去することができません。
ポケットの深さが5mm以上になると物理的な清掃が困難になり、
結果的に細菌が残存することで再感染のリスクが高まります。
また、一部の細菌はバイオフィルムを形成し、これが殺菌処置に対する障壁となります。
さらに、歯周ポケット内には酸素が届きにくいため嫌気性細菌が繁殖しやすい環境が整っており、
これも完全な殺菌を妨げる要因となります。
このため、より効果的な殺菌方法を導入することが、治療の成功率を向上させるために重要です。
・外科的処置の侵襲性
重度の歯周病になるとスケーリングやルートプレーニングなどの保存的治療では
対応が難しくなり、歯周外科手術が必要となる場合があります。
しかし、外科的処置は多くの患者様にとって大きな負担となる可能性があります。
手術自体が侵襲的であるため術後には腫れや痛みが伴い、日常生活に影響を与えることがあるためです。
さらに、手術後の回復期間が長いと定期的な通院や処置後のケアが必要となるため、患者様の負担はさらに増します。
これにより、患者様が治療を途中でやめてしまうケースも少なくありません。
このような問題点を解消するためには、より低侵襲で高い治療効果が得られる技術の導入が求められています。
・抗生物質の耐性菌問題
歯周病治療では抗生物質を併用することが一般的ですが、この方法には薬剤耐性菌のリスクが伴います。
抗生物質を長期間使用することで細菌が抗生物質に耐性を持つようになり、治療効果が減少する可能性があるのです。
特に、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスやアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスなどは、
抗生物質耐性菌の発生が報告されています。
また、抗生物質の使用は口腔内の善玉菌を減少させる可能性があり、
これが口腔内環境の悪化や二次感染のリスクを高める要因となることがあります。
このため抗生物質に頼らない治療方法が、持続可能な歯周病治療のために重要視されています。
□ブルーラジカルとは?
ブルーラジカルは、青色レーザー(波長405nm)と過酸化水素(3%溶液)を利用して
「ヒドロキシルラジカル」を生成する技術です。
このラジカルは非常に高い酸化力を持ち、細菌やウイルス、真菌にまで強力な殺菌作用を発揮します。
特に歯周ポケット内の難治性細菌に対して高い効果を示すことが、近年の研究で明らかになっています。
□ブルーラジカルの特徴と仕組み
ブルーラジカルは、青色レーザーと過酸化水素を組み合わせて生成される活性酸素「ヒドロキシルラジカル」を用いた新技術です。
このラジカルは、非常に高い酸化力を持ち、細菌の細胞膜やDNAを短時間で破壊することができます。
その結果、従来の方法では到達が難しかった歯周ポケットの深部の細菌にも効果的に作用します。
この技術の特徴として、光化学反応により過酸化水素が分解される際にヒドロキシルラジカルが生成される仕組みが挙げられます。
このラジカルは、反応が生じる瞬間に歯周ポケット内でのみ活動するため、
周囲の健康な細胞や組織に与えるダメージを最小限に抑えられるという利点があります。
また、ブルーラジカルは細菌だけでなくウイルスや真菌にも作用するため、幅広い病原体に対応可能であることが研究で示されています。
これにより、従来の治療法では十分に殺菌できなかった病原体にも対応できるようになります。
□ブルーラジカルの特徴とメリット
・幅広い病原体への作用
細菌のみならずウイルスや真菌にも効果があるため、口腔内の多様な病原体に対応可能です。
・周囲組織への影響を抑制
ラジカルの反応は歯周ポケット内で限定的に起こるため、周囲の健康な組織へのダメージが最小
限に抑えられます。
・低侵襲で患者様の負担を軽減
外科的処置を回避できるため、患者様の身体的・心理的負担を軽減します。
□臨床試験と研究成果
・殺菌効果の実証
東北大学大学院歯学研究科の中村圭祐ら(2024)による研究では、ブルーラジカルが歯周病原
因菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス)に対し
て99%以上の殺菌効果を示したことが報告されています。
・炎症の改善と歯周ポケットの縮小
東北大学大学院歯学研究科の佐々木ら(2017年)によって行われた臨床試験では、治療後に歯
肉の炎症が大幅に軽減され、出血や痛みが減少したことが確認されています。また、従来のSRP
治療と比較して、ブルーラジカル治療後には歯周ポケット深度が平均2mm以上減少したという報
告もあります。さらに、ブルーラジカルは歯槽骨再生療法とも併用可能であり、重度の歯周病患者
における治療の可能性が広がるなど従来の治療法では得られにくい高い治療効果を示していま
す。
□患者様にとってのメリット
・痛みや負担の軽減
外科的手術を避けることで、治療後の痛みや腫れが軽減されます。
・抗生物質不要
抗生物質を使用しないため、副作用や薬剤耐性の心配がありません。また、妊婦や抗生物質アレ
ルギーを持つ患者様にも適用できます。
・短時間での治療
一回の治療が短時間で完了するため、忙しい患者様にも適しています。
・審美性の向上
歯肉や歯の外見に悪影響を与えないため、審美的な観点からも優れています。
□まとめ
ブルーラジカル技術は、歯周病治療における新たな選択肢として大きな注目を集めており、技術
の普及と研究の進展により、歯周病治療のスタンダードとして定着する可能性があります。その非
侵襲性、高い殺菌効果、そして抗生物質を必要としない点は、多くの患者様にとって理想的な治
療法といえるでしょう。
<参考文献>
中村圭祐ほか. 「ブルーラジカルを用いた歯周病治療の有効性に関する臨床研究」. 日本歯周病
学会誌, 2024.
東北大学大学院歯学研究科・Luke株式会社. 「ブルーラジカル技術の概要と応用」. 2023.
Taro Kanno, et. al. Adjunctive antimicrobial chemotherapy based on hydrogen peroxide
photolysis for non-surgical treatment of moderate to severe periodontitis: a randomized
controlled trial. Scientific Reports, 7, 12247, 2017 DOI: 10.1038/s41598-017-12514-0
徳島市の歯科(歯医者)喜多歯科クリニック
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